3,000万円の特別控除と住宅ローン控除

前回の記事で「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」について解説しましたが(前回の記事はこちら)、この3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用することができず、どちらか有利な方を選択適用しなければなりません。
これは、住宅ローン控除の適用要件として、
「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例など(租税特別措置法31条の3、35条、36条の2、36条の5若しくは37条の5又は旧租税特別措置法36条の2、36条の5若しくは37条の9の2)の適用を受けていないこと。」
という要件が定められているためです。
(参考)
・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法31条の3)
・居住用財産の譲渡所得の特別控除(租税特別措置法35条)
・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法36条の2)
・特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法36条の5)
・既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法37条の5)
これらの特例を利用した場合、特例を利用した年分だけではなく、控除可能期間の全期間にわたって住宅ローン控除を受けることができませんので、注意する必要があります。
例えば、譲渡益が500万円、その年に住宅をローンで購入し、住宅ローン控除の減税額(総額)が200万円という事例があったとします。
3,000万円の特別控除を利用した場合には、譲渡時の譲渡所得額は、
譲渡益500万円-特別控除500万円=0円
となり、税額は0円ですみます。
ただし、住宅ローン控除は受けることができません。
一方、特別控除を受けずに住宅ローン控除を利用した場合には、譲渡時の納税額は、
譲渡益500万円×税率20%=100万円(復興特別所得税は無視)
となりますが、住宅ローン控除で200万円の減税を受けることができるので、正味100万円の減税効果があります。
したがって、このような場合は住宅ローン控除を利用したほうが有利ということになります。
マイホームの売却後に新たに住宅ローンを使って新居を購入する場合には、売却時に特例を使うかどうかはシミュレーションのうえ、慎重に判断する必要があります。
なお、売却時までに、買い替えた住宅に関して住宅ローン控除を受けており、3,000万円の特別控除を利用することとする場合には、過去2年分の所得税の修正申告を行って、住宅ローン控除を行っていなかったように修正したうえで特別控除を受けることになります。
【参考】http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
