迷走!電力会社の廃炉会計見直し

電力会社において、津波や地震などの安全対策が不十分であったり、直下に活断層があったりして、多くの原子力発電所が廃炉となる見込みです。
この、原子力発電所の廃炉に関する会計処理について、ここのところ多くの情報が報道されています。
廃炉に関する会計処理が問題となる理由は一言で言ってしまうと、通常通り処理すると多額の除却損(特別損失)が出てしまうからです。
原子力発電所は、当初は40年超稼働することを前提として減価償却を行っていましたが、原子力規制委員会の新規制基準は、原子力発電所のの運転期間を原則40年間と定めるそうです。
従って、減価償却が終わる前に廃炉となってしまう原子力発電所が多く発生してしまいます。
また、当初の予定よりも前倒しで廃炉としますので、廃炉費用の十分な積立もされていないため、多額の除却損が発生してしまうことになります。
なぜ、除却損(特別損失)が出てしまうと問題になるかというと、私たちが普段の生活で使っている電気料金の決定方法に関係があります。
現在、電気料金は、総括原価方式という方法によって算定されます。
総括原価は、燃料費・購入電力料、電気事業用資産の減価償却費、修繕費や人件費に、事業報酬(電力会社の儲け)を加えて電気料金を計算するという方法です。
この方法によると、特別損失は電気料金の算定の基礎には含めることができません。
つまり、原子力発電所の廃炉に関して発生した除却損は、電気料金に転嫁して回収することができないわけです。
そこで、このルールをなんとかするべく、会計処理の見直しが検討されています。
2013年6月5日の日経新聞の記事では、
『廃炉費用の積み立て不足は廃炉を決めた後も毎年積み立てられるように見直す。
いまは原発が停止していると積み立てられないが、運転状況にかかわらず積み立てられるよう改める。
減価償却が終わっていない設備は一部を「廃炉のために必要な資産」などとみなし、減価償却を続けられるようにすることを検討する。』
と見直しの概要が紹介されています。
廃炉費用を、除却損ではなく、経常的な費用として計上するための会計処理で、趣旨はわからなくもないですが、除却資産の減価償却を継続するなど、会計の理論からするとちょっと考えられない処理です。
電力会社は経産省が定める会計規則に従う一方、上場企業ですので通常の会計基準も当然適用されます。
あまりに会計理論からかけ離れた処理は少しイマイチな気がしてなりません。
