生命保険を使った節税のホント!?

「生命保険を使って節税ができる」という話を聞いたことがあるでしょうか?
生命保険は節税の常套手段としてよく用いられる手段なのですが、正しく理解して使っている人が極めて少ない手段です。
そもそも生命保険で節税できるというからくりを説明すると次のとおりです。
まず、生命保険は支払い時に損金算入されます(保険の内容によって全額であったり、1/2であったり、損金算入される割合は異なります)。
従って、毎期保険料を支払うことによって、払った分だけ所得を圧縮し、税負担を軽減することができます。
そして、節税に使う保険は、一定期間後に解約することで返戻金が受け取れます。この期間はある程度自由に設計することができます。
この返戻金は保険の内容によって異なりますが、通常支払額の満額に近い額となるように設計することができます。場合によっては100%を超える返戻率となる場合もあります。
例題で考えてみると以下の通りです。
<前提条件>
①毎期継続して100万円の利益(所得)の会社
②毎年100万円支払う生命保険(100%損金算入)に加入
③加入した保険は10年で解約するように設計
④10年後の返戻率は100%
⑤税率は30%
この場合、
毎期の所得:100万円-100万円=0円
税額:0円
毎年の保険料支払額:@100万円×10年
10年後の解約返戻金:1,000万円
となります。払った保険料は全額かえってきて、その間に節税もできてしまう夢のような商品のような気がしますよね。
参考までに、保険に加入しなかった場合は以下のとおりです。
毎期の所得:100万円
税額:100万円×30%=30万円
10年間の税負担:@30万円×10年=300万円
上記のような説明でよく保険の販売をする販売員や税理士がいますが、ここで説明をやめてしまうようであればその人は信用できません。
保険の検討にあたっては、解約返戻金の取り扱いまで含めて考える必要があります。
保険を使って毎年節税したとしても、解約返戻金を受け取ったときにその解約返戻金は益金となり課税されることになります。
上記の説例で考えると、10年後に解約返戻金を受け取ったときの税負担は、
1,000万円×30%=300万円
となります。
保険に加入しなかった場合の税負担額と同じですね。
つまり、保険を使った節税は、結局のところは課税の繰り延べに過ぎないわけです。
保険を使った節税をする場合は、
例えば将来の税率が下がることが決定されている、または予想される場合や、
満期時に支払い予定の退職金に充てるための原資にする等の出口対策がなされている
等の場合に有効です。
いったん保険を契約すると毎年支払いを行わなければならず、キャッシュが固定されますし、設計した期間よりも前に解約してしまうと解約返戻金がかなり低くなってしまうことが多いので、保険の加入は慎重に検討する必要があります。
