法人が無償譲渡したら寄付金になる!

法人が、資産を無償(タダ)で譲渡した場合、企業会計上は資産の譲渡損失を計上することとなります。
しかし、法人税法上は、譲渡資産の時価相当額を譲渡先へ寄付したという取り扱いが為されます。
また、その譲渡先が法人の役員又は使用人である場合にはその者に対する給与として取り扱われます。
寄付金として取り扱われた場合には、一定の計算で算出した損金算入限度額までしか損金となりません。
また、役員給与となった場合には、通常は損金に算入できる役員給与ではありませんので、この場合も損金に算入されません(役員給与の取り扱いはこちら)。
つまり、譲渡損失の一部又は全額が損金として認められないという結果になりますので、注意が必要です。
【例】
法人が土地(帳簿価額1,000万円、時価1,000万円)を、無償(タダ)で①第三者に譲渡した場合、②役員に譲渡した場合の取り扱い。
①第三者に譲渡した場合
【会計上の仕訳】
(借方) 土地譲渡損失 1,000万円 (貸方) 土地 1,000万円
【税務上の仕訳】
(借方) 土地譲渡原価 1,000万円 (貸方) 土地 1,000万円
(借方) 寄付金 1,000万円 (貸方) 土地譲渡収益 1,000万円
簡略化すると、
(借方) 寄付金 1,000万円 (貸方) 土地 1,000万円
ここで、例えば寄付金の損金算入限度額が300万円であったとすると、会計上は1,000万円の損失を計上していますが、税務上は300万円までしか損金にできません。
従って、会計上計上した土地譲渡損失のうち700万円が損金として認められず、別表上で加算処理されることになります。
②役員に譲渡した場合
【会計上の仕訳】
(借方) 土地譲渡損失 1,000万円 (貸方) 土地 1,000万円
【税務上の仕訳】
(借方) 土地譲渡原価 1,000万円 (貸方) 土地 1,000万円
(借方) 役員給与 1,000万円 (貸方) 土地譲渡収益 1,000万円
簡略化すると、
(借方) 役員給与 1,000万円 (貸方) 土地 1,000万円
会計上は1,000万円の損失を計上していますが、税務上は役員給与を損金算入することができません。
従って、会計上計上した土地譲渡損失1,000万円全額が損金として認められず、別表上で加算処理されることになります。
