棚卸資産の低価法の時価は?

前回の記事で、棚卸資産の評価について解説しましたが(前回の記事はこちら)、今回は、棚卸資産の評価に低価法を用いた場合の「時価」についてもう少し詳しく見ていきます。
「時価」には、正味売却価額と、再調達原価があります。
正味売却価額とは、売却可能価額から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除した価額のことをいいます。
イメージとしては、「いくらで売ることができるか」という意味の時価です。
これに対して、再調達原価とは、購入時の市場における時価に付随費用を加えた価額のこといいます。
イメージとしては、「いくらで買うことができるか」という意味の時価です。
棚卸資産の評価にあたり用いられる時価は、このうちの正味売却価額によることとされています。(法人税法基本通達5-2-11)
企業会計上も原則として正味売却価額により評価を行うこととされていますので、原則的な処理を行っている場合は会計上と税務上の処理は同じになります。
しかし、企業会計上は、再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額がその再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、再調達原価を用いて評価を行うことが許容されています。
この場合、税務上の原則と会計上の処理が異なることになりますので、別表調整が必要になるのか、問題になりますが、税務上も再調達原価による評価が認められる旨が公表されています。(平成19年12月7日付課法2-17ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明について)
従って、結論としては、棚卸資産の低価法に用いる時価は、「正味売却価額」と「再調達価額」のどちらによっても問題ないということになります。
【参考】
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/05/05_02_02.htm
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/7081/04.htm
企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
